Dr.Gawaso書店「日本列島改造論 / 田中角榮」

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『三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばすのであります』

 

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概要

第64・65代内閣総理大臣・田中角榮氏(1918年(大正7年)5月4日 – 1993年(平成5年)12月16日)が、首相就任目前の1972年(昭和47年)6月20日に発行し、政策本としては異例の91万部を超える大ベストセラーを記録した書籍。本書を出した翌7月7日、田中氏は首相に就任。本書はいわば「マニフェスト(政権公約)」ともいえる。

「国土の均衡ある発展」を掲げ、1970年代の「日本のかたち」をどのように描いていくか、その処方箋を豊富なデータと具体的な政策を交えながら提言する。

初版出版から半世紀を経て「復刻版」として再発売された。序文は田中氏の長女で文部科学大臣、外務大臣、科学技術庁長官などを歴任した長女の田中眞紀子氏。

大都市と地方の格差解消、高まる環境問題への対処、デジタル化の推進など、現代にも共通する多くの古くて新しい課題にも向き合っている。

 

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大都市と地方の格差解消、高まる環境問題への対処、デジタル化の推進―

「明治100年」に上梓された本書。当時の課題として「都市集中による大都市圏の過密、公害、物価上昇」「過疎による地方衰退、地域格差」「労働人口の減少」「インフラ整備の必要性」であった(ただしこの課題はその後も解消されることなく、現在も続いてることは残念である)。

東京への一極集中とそれに伴う農村部の疲弊が社会問題化していた70年代。新幹線を中心とした高速鉄道や高速道路を地方に行き渡らせることで人口と産業の地方分散を実現、「過疎と過密」を同時解消することを鮮明に打ち出している。そして「地域発展の裏付けがなければ、国土計画は目標を達成できない」と説く。

そのアプローチは理論的かつユニーク。日本の国土はアメリカの30分の1に過ぎないが、ここにアメリカ並みの経済を上乗せするか?「過密対策では、都市機能の一部を担っていた工業を東京や大阪から移転し、全国的な視野で再配分することを模索。

特に知識と知恵が求められる「知識集約型産業」を内陸部に配置することを立案している。知識集約型産業は、それまで日本を牽引してきた重化学産業と異なり、公害を出しにくい産業群であり、環境対策にもつながる。また工業を地方に分散させれば職が生まれ、自然と人口も増える。

そして人と産業が地方に移りやすくするために鉄道網や道路網を整備し、大都市と地方のアクセスを容易にする-これが「国土の均衡ある発展」であり、田中角榮氏は「人と経済の流れを変える」と指摘する。

本書の中で、氏が強化すべき分野として「世界の自動車産業の中核になると見込まれる電気自動車(EV)開発の必要性」が明記されているのには驚いた。また「情報ネットワークの構築」として、インターネット時代の到来(「有線テレビ、テレビ電話、さらに職場でも家庭でもボタン一つでコンピューターを呼び出すことができるデータ通信など、情報化時代にふさわしい情報ネットワークを作らなければならない」(本文より))やリモート会議、テレワークへの移行をうかがわせる記述もあり、その先見性に改めて驚かされる。

 

 

ただ、「東京一極集中の解消と地方創生」という本書の主要テーマが、50年経過した現在でも未だ解消されていなことが分かる。その後「第一次オイルショック」が起こったことも影響し、緊縮財政に向かわざるを得なかったことも計画実行の足かせになった。

 

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『トンネルがなかったら、私らは生きていかれんかった』

参照:田中角栄、最後の言葉「政治家は誰のためにいるのか」彼が成し遂げたかったこと

 

元新潟県議、広井忠男氏

「塩谷は60戸しかなかったから、1戸4票としても240票にしかならない。

見附市や三条市のような町場にドーンと投資したほうが、よっぽど票になるわけですよ。

それ一つ考えてみても、当時のマスコミが書いた

『角栄は自分の選挙のために12億円の公共事業をやった』という批判はおかしいんだ」

 

塩谷の昔からの住人はこう言う。

「トンネルがなかったら、私らは生きていかれんかった。

あの時は『田んぼの畔まで舗装するつもりか』と笑われたよ。

でもみんな必死だったんだ。角さんは貧乏人に優しい政治をしてくれた」

 

 

 

復刻版 日本列島改造論  2023/3/18
田中角榮 (著)
http://www.tanaka-zaidan.net/

 

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