芥川龍之介による、いわゆる『切支丹物』の代表作。
1918年(大正7年)、芥川26歳時の作品。
昔、長崎の寺院に仕えていた孤児の美少年が、町の傘張り人の娘に子供を生ませたという疑いをうける。長崎の町に大火が起きた際、その娘の家も焼け、娘は逃がれるが、幼児は火の中に残された。
この時、猛火の中に飛び込み、幼児を救ったのは、嫌疑をうけた美少年だったが、不幸にも彼は焼死する。
その結果、この殉教の少年は、男ではなく女性であることが判り、その疑いが晴れる…
信仰に生きる強靱な美しさと、充実した生に対する感嘆を謳い上げる傑作。